antique-vintage

ミフラーブ文様

2014.5 / 6

信仰心が深くなると

このような文様の絨毯を作り上げる事も当たり前かもしれない

カシュガイ族

イラン国立絨毯博物館展示のモノ

DSCN0370

部族の中でも造りの良さで高く評価されているのだが

そもそも

『天上界への入り口を表現しているアーチ』

三日月と並んでイスラム教の象徴とされる為

モスクの絨毯にデザインされたり飾られたりしているそうだ

モスクにはミフラーブは欠かせないし

逆にミフラーブがあれば

どこでも

お祈り出来る

因に

ミフラーブとはモスクに欠かせない設備

534px-Haga_Sofia_RB5

ここまでが前置き

ここからはかなりコアな話

『1』

遊牧民であるカシュガイ族では古くから質の高いミフラーブ作品が織られていて

IMGP5915

これはシラーズ地方のカシュガイ族定住の地の作風

KASHKOLI
(カシクリ)

194×130

IMGP5909

綺麗に左右対称に全てのモチーフが織られている

遊牧民も定住すると織り機の精度も上がるし暮らしが形になるのですよ

なので

独特のユルさは無くなるのですが緻密さが芽生えるようになる

ボーダーにモチーフされている小鳥も特徴的

IMGP5912

そして

『2』

イラン南部ファルス地方カシュガイ族

308×215

IMGP5446

広げてみよう

IMGP5454

定住しないと同じ民族でもこれほど違ってくるのかと思う雄大な雰囲気

50〜70年前のモノと思われるのですが

未使用で状態が良く古い絨毯には感じない一枚

伝統的なモチーフはしっかり入れ

完成度の高さと自然界との偶像崇拝をも感じる

IMGP5449

作者の感性に任せた小花(ミルフルール)の配置がちょっと素敵

IMGP5451

よ〜く視ると

メインモチーフを除き

全てのミルフルールはアシンメトリーなのです

解りにくいかもしれないので同じ位置を抜粋し

1

ミルフルールが非対称ですよね

これは

下絵が無い事を物語っています

『1』の場合はカルトゥーン(下絵)をもとに織っていますので

かなり精密でしたよね

しかしながら

『2』は遊牧民特有のユルさが出ています

それが

メインモチーフの数点をしっかり配置し

あとは織りながら埋めて行く技法の現れ

「その証のヴァギレ」

90×54

IMGP6251

一見出来損ないのような絨毯ですが

これが貴重な一枚

実は滅多に出回る事の無いモチーフのサンプルなのです

少々残念なのですが

『2』とは少しモチーフが違ってます

しかしながら

時代や産地は一致し

完全な状態です

作者はこのヴァギレを使い大まかにイメージしたら織っていきます

先程のミルフルール等で埋めて完成させて行くのです

このように

ヒトが何かの為に祈る行為は信仰を超え理解出来ますし

強いエナジーがモノづくりを後押しします

つまり

神聖なモノが故

なおさらモノとしても質が高くなるのです

信仰の深い遊牧民の場合

テントの中に飾ったりモスクの方角へ向け下に敷き

お祈りをするのです

このような絨毯のみならず

宗教美術を評価する事は世界中で広がり続け

インテリアの中に取り入れる事も決して

珍しくは無いのです

ここ数年ヨーロッパでも盛んに広がっていて

例えば

「仏教徒でもないのに仏教美術彫刻を飾っていたり」

「偶像崇拝のアフリカ彫刻」

「ヒンドゥー教の偶像ガネーシャ」

etc.

もっと身近に例えファッション界では

「クリスチャンでもないのに十字架のペンダント」

このように

それぞれ一つ一つ

信仰を超えモチーフの意味合いが広がって行く事は良くある事で

なかでも

このミフラーブに関しては

カシュガイ族ですら今では織っていないので

過去のモノとしての更なる評価も高めているのです

そんな

「ミフラーブ文様」

でした